櫻井幸雄の人生相談

2018.06.11

Question

田舎にある実家。継いであげたい気持ちと残りたい気持ち、どうしたら?

こんにちは!櫻井先生、私、最近揺れ動いております…。
といいますのも、田舎にある実家と都会のマンションのどちらを取るべきか、ということなのですが…。

先月婚約が決まり婚約者よりマンション購入について話が出ました。田舎から上京とともに就職して以来17年、ずっと同じ会社に勤め仕事に尽くしてきたため、このまま東京で自分の家庭を持てるというのはこの上ない幸せ。
けれど、年々老いていく両親の顔がつい思い浮かびます。両親は強く主張してくることはないものの、長男である私が帰ってくること望んでいるはず。

マンションのパンフレットを眺める婚約者に田舎暮らしについて提案してみるか、実家で待つ両親に都内でのマンション購入について報告するか…、どうしたらよいのでしょうか…?
(40歳会社員男性)

田舎の両親のことを考え、いずれ一緒に暮らしたい。その気持ちはとてもすばらしいと思います。親は大切にしなければなりませんね。

しかし、そのことだけを考えてもいられません。もし田舎に帰るとすると、これまで築いてきたキャリアを捨てなければなりません。また、田舎でこれまでと変わらぬ収入が得られるかどうか、という問題もあります。それ以前に、田舎で自分にふさわしい仕事があるか、という大前提さえ出てきますね。

もう1つ、大きな問題を忘れてはなりません。それは、婚約者がマンションのパンフレットを見ているという事実です。きっと楽しそうにパンフレットを眺め、これからの生活を夢見ているのでしょう。そのときの婚約者の頭の中には、「田舎に帰る」という発想は一片もないはずです。

その婚約者に、いきなり「田舎に帰りたい」と持ち出せば、どうなるでしょうか。言葉を失う、あきれる、怒り出す、泣く…そんなシーンが思い浮かびます。それは何より、婚約者に対する裏切りに匹敵する行為だからです。

というのも、ご質問者はこれまで「田舎に帰る」ことはいい出していなかったはず。だから、婚約者は都会暮らしのままでマイホームとなるマンションの購入を検討しているのだと思います。その婚約者に田舎に帰ることをいい出せば、「そんな話は聞いてない」ということになります。婚約とは、お互いのことを知り、共通の価値観や未来像などがあると認め、この人ならともに暮らすことができる、と決めたことを意味します。それなのに、今さら「聞いてない」ことを持ち出せば、婚約者が混乱することは当然といえるでしょう。

「田舎に帰る」話を持ち出すには、少なくとも順序が必要です。いきなりはダメです。

「マンション購入を考えたら、本当に買ってもいいのか迷いが出てきた」
「田舎の両親を見捨てるようなことにならないかな」
「やっぱり親は大事にしたい。最後は自分が面倒を見たい」

そのように順序立てて自分の気持ちを説明すれば、婚約者も混乱することはないでしょう。「その気持ちも分かるわ」といってくれるような婚約者であれば、ご質問者はいい人を選んだことになります。その上で、2人で相談ですね。

協議の結果、彼女が「分かった、私も田舎についていく」といってくれるかもしれません。「私には無理」となる可能性もあります。2人の将来に関わる大事な問題なので、じっくり話し合ってください。

最後に私の考えを述べさせていただくと、田舎に帰るのは「まだ早い」のではないかと思います。「上京して17年」ということは、ご質問者はまだ40歳そこそこではないでしょうか。ご両親は60代か70代。十分に若いといえます。いずれご両親と同居もしくは近居するにしても、今はまだお互いの生活を尊重し合い、それぞれの場でがんばることができるでしょう。一般的に同居を考え出すのは親が80歳を超えたあたりからです。

同居・近居の問題は、必ずしも「子どもが田舎に帰る」ことだけに限りません。最近は「親が子どもが暮らす都会に出てくる」ケースも増えています。田舎暮らしが不便な場合、「駅に近く、スーパーマーケットが隣にある」というような便利なマンション暮らしに憧れるもの。そんな便利なマンションに子どもが住んでいると、「私たちも…」ということになりがちなのです。

そこで、1つマンションを購入する場合のアドバイスをしましょう。
将来起こりうる諸問題を考慮して、購入するなら「郊外で、駅から徒歩5分から10分で買い物便利なマンション」を狙いましょう。都心から30分以上離れた郊外ならば、そのようなマンションが3,000万円台、4,000万円台で見つかります。今は「都心のマンション」と「駅から徒歩5分以内のマンション」だけが値上がりし、駅から少し離れたマンションは割安です。

その割安マンションは、次の狙い目としてこれから値上がりする可能性が高くなります。値上がりすれば将来売却して、田舎にも帰りやすくなるのです。都会でマンションを買ったからといって、親との縁が切れるわけではありません。親と同居・近居しやすいマンションを買えば、かえって親との距離が縮まることになるのです。

40歳そこそこといえば脂の乗った時期、これから仕事も一層充実してくる頃でしょう。婚約者との話し合いが上手く運び、よりよい結果となることを心より希望しています。

情報提供:住宅ジャーナリスト 櫻井幸雄

1984年から週刊住宅情報の記者となり、99年に「誠実な家を買え」を大村書店から出版。以後、多くの著書を送り出し、新聞雑誌への寄稿、コメント出しも精力的にこなす。2000年の文化放送「梶原放送局」を皮切りに、テレビ・ラジオに多く出演。