櫻井幸雄の人生相談

2018.07.09

Question

賃貸育ちの僕…。マンション購入にあまり魅力を感じません。

はじめまして。28歳男です。
交際中の彼女とお互い結婚を視野に入れ同棲をしており、休みの日には結婚後のあれこれやマイホームなど将来について話題が上がります。

先日も、「新築マンションの場合、購入か賃貸か」という話をしていたのですが、彼女は購入派だそう。彼女が子どもの頃に社宅から新築の持ち家に引っ越し、やっと「実家」という感覚を持てたみたいで、子どもを育てるなら購入した家がよいという意見でした。ほかにも、長くお金を払うなら、借りるのではなく、購入して財産にした方がよいのでは?ということもいっていました。

一方、僕はずっと賃貸育ちで賃貸に不便を感じたことはなく、賃貸派。何か困りごとや不便があったときには引っ越しやすくてよいと思います。

僕たちはすぐに購入するわけではないのですが…大事なことなので、結婚する前に相談しておきたいと思いました。櫻井先生は今まで本気で悩んでいる人の相談をたくさん受けてきたかと思います。大勢の人を見てきて思うことがあれば教えてください。
(28歳会社員男性)

ご結婚おめでとうございます。
結婚に際し、2人で話し合っていらっしゃるのですね。とても大事なことです。

さて、結婚後の住宅観ですが、私の経験からすると「一生賃貸でよい」と考えるのは男性に多いですね。反して女性は「マイホームを持ちたい」という考えに傾きがちです。女性にマイホーム志向が強いのは、色々な理由があると思います。多くの場合、女性は家で過ごす時間が長くなります。長い時間を過ごす家は、思いどおりにできる場所であってほしい、という気持ちが強くなるものです。

また、女性は老後の不安をなくしたいと考え、マイホーム志向が強くなる傾向もあります。結婚するお2人が同年代の場合、平均寿命の差で女性の方が長生きする可能性が高くなります。賃貸暮らしでご質問者が先に亡くなった後、遺された奥様が年金だけで賃貸の家賃を払うのは大変です。サービス付き高齢者住宅などに入るのにも苦労するでしょう。

彼女にこのような老後の不安をなくしてあげるには、現役時代にコツコツ貯金をして、ある程度のお金を遺す必要があります。ところが、子育てをする間はなかなか貯金などできません。

たとえば、仕事をリタイアする65歳くらいまでに1,500万円貯めようとする場合、現在28歳のご質問者には37年の猶予があります。37年間に1,500万円となると、毎年約40万円。毎月3万3,333円。それくらいなら、簡単にできそうに思えます。ですが、実際には家賃を払いながらそれだけ節約するのはかなり大変です。そして、100万円、500万円と積み上がっていく貯金を取り崩さず、守り続けて増やすのはさらに大変です。

では、分譲マンションを買った場合はどうなるでしょう?今、郊外で物件を探すと、家賃並の金額でローン返済と毎月の管理費・修繕積立金をまかなうことができるマンションが見つかります。そんなマンションを購入した場合、毎月の支出は賃貸を借りているときの家賃とほぼ同じ。ただしその場合も、貯金はできないでしょう。

しかし、そこで分譲マンションを購入すれば35年後にはローン返済が終わり、以後の支出は毎月の管理費・修繕積立金と年1回の固定資産税だけです。ご質問者が亡くなった後も、彼女に「住むところがなくなる」事態は避けることができます。

しかも、サービス付き高齢者住宅に移るときは、そのマンションを中古として売却し、資金を調達することができます。駅から徒歩圏のマンションであれば、値下がりしたとしても、購入時の半額程度で売却できます。

3,500万円で新築購入したマンションであれば、1,750万円程度が手に入ります。仲介手数料やほかの経費を引いても、1,500万円以上は残るでしょう。たとえ貯金がゼロでも、分譲マンションを買っていれば、1,500万円を大きく超える現金が手元に残るのです。

失礼ながら、万一ご質問者が若くして亡くなったときのことを想像してみてください。その場合、住宅ローンについている団体信用保険によってローンは完済されます。以後、住宅ローンの返済はなく、家族は管理費・修繕積立金・固定資産税だけの支出で同じマンションに暮らし続けることができます。

これに加えて生命保険があれば、遺された家族はどんなに心強いことか。「子育てを考えたら、マイホームの方がよい」というのは、そういう安心も考えてのことだと推測されます。

ご質問者が亡くなったときの話ばかりしてしまい、申し訳ありません…。でも、結婚して相手と子どもの人生を託されるのですから、世帯主としてはそこまで考えておく必要があります。

結婚すれば、色々な自由がなくなります。でも、その代わりに得られる喜びも大きなものがあります。代償を払わなければ得られない幸せがあるのだと、私は考えています。

情報提供:住宅ジャーナリスト 櫻井幸雄

1984年から週刊住宅情報の記者となり、99年に「誠実な家を買え」を大村書店から出版。以後、多くの著書を送り出し、新聞雑誌への寄稿、コメント出しも精力的にこなす。2000年の文化放送「梶原放送局」を皮切りに、テレビ・ラジオに多く出演。