マンション購入ガイド

2018.07.31

Question

マンション購入後の「大規模修繕」って何をするの?

マンション購入から10年目。大規模修繕についての案内がまわってきました。マンションを購入した際に大規模修繕については聞いていた気がしますが、10年も経ちなんのことだか…という感じです。大規模修繕では何をするのか、また所有者は何が必要かについて教えてください。

Answer

大規模修繕とは、マンションの経年劣化に伴う大掛かりな修繕工事。管理組合で依頼会社の調査や依頼をします。

情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸

目次

マンションの大規模修繕とは?

マンションの大規模修繕とは、マンションの経年劣化に伴い、建物や設備をまとめて修繕する工事のことです。大規模修繕工事の対象となるのは、マンションの共有部分。具体的には、修繕範囲が広く修繕費が高額となる外壁や屋上、上下水道の配管、共有部分でありながら専用使用されているバルコニーやポーチ、日々使用するエントランスや廊下などがあてはまります。

通常、これらの共用部分は劣化による重大な問題が起こる前に修繕する必要があります。しかし、こうした修繕はマンションの共用部分全体を対象とするため大掛かりな工事となり、費用も高額に。また、工事中は入居者の普段の生活に少なからず支障が出ます。このように、大規模修繕は費用の準備や実施時期について配慮が必要ため、計画的に行う必要があります。

大規模修繕工事の内容や実施時期を決める管理組合
マンションの大規模修繕の具体的な内容や実施時期は、そのマンションの区分所有者(=マンションの各部屋の所有者)で構成される管理組合で決定されます。その大まかな実施時期は、新築時に管理会社や施工会社などが立案した長期修繕計画案を元にしていることがほとんどです。
ただ、当初の実施時期や内容はあくまで過去の経験や実績による計画。そのため個々のマンションの実態(劣化の進行状態や不具合の発生状況など)に合わせて、後に大規模修繕工事や小修繕、改修の内容や実施時期を管理組合で計画の見直しも含めた実施の判断をしていきます。

大規模修繕の具体的な内容はさまざま
具体的な大規模修繕の実施箇所や内容については、個々のマンションで異なってきます。代表的な修繕箇所を以下に挙げてみましょう。

外壁工事 タイル張りの場合は、浮きや割れなどを確認し、樹皮接着剤の注入や交換などを行って補修。タイル張り以外の部分は、ひび割れなどの下地補修を行った後、塗装を行う。
防水工事 屋上、バルコニー、共用廊下・階段などに防水塗装や防水シートなどの防水工事を行う。
鉄部塗装 エレベーターまわり、バルコニーなどの手すり、フェンス、防水扉、機械式駐車場などの共用部分の鉄部に防錆塗装後、表面塗装を行う。
シーリング工事 外壁や窓枠などのつなぎ目や隙間に充填されているゴム状のシーリング材のうち替えを行う。
洗浄 外壁表面に付着した汚れを落とすとともに、表面的には目立たない劣化箇所を露出させるために行う。
配管工事 一定の年数を経ると、上下水の配管に痛みが。比較的新しいうちは配管の洗浄で足りるが、築年数が古くなると補修や交換が必要。
そのほか 築年が進んだマンションの大規模修繕工事では、エレベーターの交換、機械式駐車場の設備交換、オートロック設備の交換など陳腐化した設備のグレードアップ「改修」工事も同時に行うことがある。

毎月支払う修繕積立金
修繕積立金とは、計画的にマンションを修繕する費用。修繕積立金は長期修繕計画に定めた修繕を計画的に行うために、毎月管理費等と一緒に徴収され、大規模修繕のような高額な支出に備えて積み立てていきます。

その代表的な使い道として、最も大きなものが大規模修繕。それ以外に計画的に修繕が必要となるものは以下のとおりです。

・エレベーター等の消耗部品交換
・各部屋の排水管清掃
・長期修繕計画にはない大型改修(駐輪場の増設など)
・補修(風水害等の災害による補修など)

このように、修繕積立金はマンションの資産価値を維持するために必要不可欠なものなのです。

特に新築マンションでは、購入時に修繕積立金の基礎となる「修繕積立一時金」というものを徴収します。たとえば修繕積立金を新築入居後にゼロから積み立てる計画にすると、数年間は万一の修繕に対応することができません。そのため、区分所有者で最初から一定額を出し合って、準備しておくのがこの修繕積立基金。また、ここには最初に一定額を確保することにより、皆の毎月の各修繕積立金額を無理のない範囲に抑えるという意味合いもあります。

マンションの修繕積立金は階・床面積で決められる
国土交通省が2011年4月に公表した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、マンションの階高を15階未満と20階以上に分け、さらに15階未満のマンションについては延床面積を5,000㎡未満、5,000㎡~10,000㎡、10,000超の3つに区分して、修繕積立金の1㎡あたりの平均月額と目安となる1㎡あたりの月額の幅を示しています。

階数/建築延床面積 平均値 事例の 3分の 2 が包含される幅
【15 階未満】 5,000 ㎡未満 5,000 ~ 10,000 ㎡ 10,000 ㎡以上
218 円/㎡・月 202 円/㎡・月 178 円/㎡・月
165 円 ~ 250 円/㎡・月 140 円 ~ 265 円/㎡・月 135 円 ~ 220 円/㎡・月
【20 階以上】 206 円/㎡・月 170 円 ~ 245 円/㎡・月

〈例〉
10 階建て、建築延床面積が 8,000 ㎡のマンションで、専有床面積 80 ㎡の住戸を購入する場合

・平均値の目安 80 ㎡×202 円/㎡・月 = 16,160 円/月
・幅の目安 80 ㎡×140 円/㎡・月 = 11,200 円/月 ~
80 ㎡×265 円/㎡・月 = 21,200 円/月

同ガイドラインには、20階以上の超高層マンションについては共用部分の占める割合が多く、外壁の補修に特殊な足場が必要になるなどの理由で修繕積立金の額が高くなる傾向があり、また機械式駐車場があるマンションも比較的修繕積立金が高くなること等が書かれています。

大規模修繕の必要性

大規模修繕の最大の目的は、マンションの資産価値の維持です。マンションの建物など建築物や構築物は経年とともに劣化していきます。そこで大規模修繕によって、劣化に伴い壊れた部分や故障箇所を補修し、マンションの共用部分の機能を回復させるのです。ほかには見た目に古臭くなった設備を交換するなどして改修し、マンションの資産価値を下げないように努めます。

また、外壁タイルの落下など入居者に危害がおよぶことがないようにしたり、エレベーターの故障等生活に不便が発生する前に大型の設備を交換・補修するといった入居者の生活環境の維持も、大規模修繕の役割となります。

大規模修繕を実施する時期とは?

大規模修繕は、おおよそ竣工後または前回の大規模修繕後10年~13年で実施されるケースが多くなります。以前は、築15年以上経ってから大規模修繕を行うマンションもあったんですよ。

2008年4月の建築基準法施行規則の改正により、特定行政庁が指定する建築物の所有者、管理者は、定期的に専門家(有資格者)による調査・検査後、報告することが義務付けられました。この改正により、指定建築物に該当するマンションは、竣工(しゅんこう)または外壁改修から10年経過後、外壁の全面打診(打診用のハンマーで外壁を叩き、浮き部や欠損した部分を探していく調査)を実施・報告しなければならなくなったのです。例外として、3年以内に調査・報告することが確実な場合はプラス10年経過してもOKで、13年以内の実施義務となります。ちなみに全面打診の「全面」とは、「落下により歩行者等に危害を加える恐れのある部分」のこと。

この外壁打診は、マンション外周に足場を設置して行う調査になるため、費用も時間もかかります。ということは、その調査の時期に合わせて大規模修繕工事を実施する方が費用や作業面で効率的。そのため、「築後または前回の大規模修繕後10年~13年で大規模修繕を実施するケース」が多くなってきたのです。

大規模修繕の流れ

ここまで、マンションの大規模修繕の仕組みや必要性についてお話ししてきました。最後に、大規模修繕の全体的な流れについてご説明しましょう。

[ 1 ] マンション管理会社と管理組合の協議
長期修繕計画に従って大規模修繕を行う前年、前々年(大規模なマンションではそれ以前)から管理組合で協議を開始します。マンションの管理について管理会社に一部または全部を委託している場合は、その管理会社も交えて管理組合で具体的な実施時期や修繕箇所、工事の委託先、予算等について話し合います。

[ 2 ] 大規模修繕委員会の発足
大きいマンションなどは、「管理組合」の理事会とは別に「大規模修繕委員会」を立ち上げ、専門のコンサルタントに依頼する例も多くなってきています。その場合はマンションの管理会社も交えるほか、専門知識のある建設業界や不動産業界の関係者等が委員に推薦されるケースが多くなっています。また、「大規模修繕委員会」と「管理組合理事会」は大規模修繕の進捗状況について、随時情報共有したり報告したりすることが必要となります。

[ 3 ] 大規模修繕にかかる事前調査
大規模修繕工事の金額、施工期間などを見積もるためには、まずは具体的な修繕箇所を事前に把握しなければなりません。そのための調査会社の選定は、積算資料の相見積もりを取るなどして、区分所有者の意見を擦り合わせながら進めます。そのなかでもマンションを施工した施工会社は建築当時に建物等を熟知していますので、見積もりも早くそのマンションに適したものを出すことが可能です。調査、見積もりの第一候補として施工会社が挙がることとなるでしょう。

[ 4 ] 大規模修繕の基本計画の策定
専門のコンサルタント会社やマンションの管理会社の協力(委託)がある場合は、調査結果を基に大規模修繕の箇所、仕様等をある程度定めた基本計画を作成し、大まかな資金繰りも行います。

[ 5 ] 大規模修繕工事の見積もり
具体的な大規模修繕箇所がおおよそ決まると、大規模修繕工事に関する実際の見積もりを複数の工事会社から取得します。ここでも、施工した施工会社は候補としては外せないものになります。管理組合の理事会や大規模修繕委員会で、その見積もりについて工事会社から説明等を受けて検討し、最も優れている(適している)と判断される工事会社を選定します。専門のコンサルタント会社や管理会社に委託している場合は、そこからアドバイスを受けることも。

[ 6 ] 大規模修繕工事会社および実施内容の決定
工事内容、金額、施工期間等具体的な内容を見積もりとともに提示し、管理組合総会(または臨時総会)を開催します。そこで、今回の大規模修繕が区分所有法の第17条、共用部分の「重大な変更」にあたる場合は区分所有者の3/4以上の賛成、それ以外であれば、区分所有者の1/2以上の賛成が必要になります。

[ 7 ] 大規模修繕工事契約の締結
管理組合総会で承認され、決定した工事会社と大規模修繕工事の契約を締結します。

[ 8 ] 大規模修繕工事の実施
工事契約で定めた計画に従った工程で工事を行います。工事に遅れはないか、計画と工事個所に食い違いはないか、計画に支障のある問題はないか、など工事の進捗状況について確認を行いながら進めていきます。専門のコンサルタントや管理会社に委託していない場合でも、これらの工事監理は重要なポイントになります。

[ 9 ] 工事完了時の確認
大規模修繕工事が完了したところで、最終確認を行います。工事の漏れはないか、工事計画と異なる点はないか、工事による不具合はないかといった点を最後に確認します。不足や不具合等があった場合は、所定の工事の範囲内か、追加工事なのかなど工事会社と協議が必要になる場合があります。

[ 10 ] アフター点検
一般的には、大規模修繕後6ヶ月や1年という一定の期間が経過したら、アフター点検を行います。工事完了時はよくても、その後その工事による不具合が発生した場合は、アフターサービスの内容に従って再修繕を行います。

大規模修繕は、マンションの規模が大きくなるほど大変な金額と時間、労力が必要となります。しかし、大切な資産であるマンションの資産価値を維持するためには欠かせないものです。

マイホームは素敵な状態で長く住みたいですよね。それには部屋の中だけでなく、マンションの共用部分もキレイで安全であってほしいもの。修繕費を地道に積み立てて、大きな改修工事に備えましょう。

情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。不動産コンサルタントとして、物件の選び方から資金のことまで、住宅購入に関するコンサルティングを行なう。