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櫻井幸雄の人生相談

2019.03.05

Question

第34回 子育て環境を重視したい!マンションを探すときの見るべきポイントは?

櫻井先生、はじめまして!夫と3歳になる子どもと、現在賃貸のマンションで暮らしている30代女性です。

子どもが生まれてからようやく少し落ち着いてきたので、そろそろマンションを購入しよう!と夫と話しています。お互い子どもを第一に考えた生活をしていきたいと思っているので、住む場所を選ぶときには、子育ての環境を重視したいという想いがお互いにあります。

子育て環境がよい場所を選ぶときには、どういったポイントをみていけばよいでしょうか? 櫻井先生、教えてください!
(30代 女性)

これは、非常にむずかしい問題です。この相談室に来た最もむずかしい質問かもしれません。というのも、なにをもって「子育て環境がよい」といえるのか、その基準がむずかしいからです。

基準の候補として、「子育て支援が充実している行政区」というのがあります。中学生まで医療費が無償になったり、待機児童が少ないなどのデータを基に住む場所を探すわけです。たとえば都心部では新宿区や千代田区が、首都圏郊外エリアでは千葉県の松戸市や神奈川県の厚木市などが子育て支援が充実しています。

といっても、新宿区や千代田区では住宅価格が高すぎてマイホームを買える人は限られるでしょう。新築マンションの価格が抑えられているから厚木市や松戸市がお勧め、というのも通勤面など考慮すると乱暴な話です。

そうじゃなくて、子どもにとって好ましい環境をそなえた場所はどうやって探せばいいの?という質問者の声が聞こえてきそうです。公園や緑地帯の多い街?図書館や大病院が多い街?いずれもピントがずれている気がします。

では、教育熱心な家庭が多い場所はどうでしょう。全体的に学力の高いエリアであれば、我が子の成績も上がりそう……ですが、小学生の頃から塾通いが多く、成績至上主義の風潮があるかもしれません。教師の前ではいい子にしていて、もしも陰でいじめが発生しているようなことがあれば、とても子育てに適した場所とはいえません。

やさしい子やおっとりした子が集まっている場所であれば、その点安心。が、果たして「やさしい子やおっとりした子が集まる場所」などあるのでしょうか。

かつて、我が子が通っていた小学校で、低学年の児童が乱暴な言葉遣いをしているのを見たことがあります。「何やってんの!」「いい加減にしてよ!まったく」たぶん、その言葉遣いは親から頻繁にいわれて覚えてしまったのでしょう。

親は、そのまた親からキツイ言葉で育てられたのではないか、などと考えると、「子育てによい環境」とは、地域の問題ではなく、人間の問題ではないかと思えてしまいます。

実際、引っ越すときは、新しい場所にどんなお店があるか、どんな学校があるかよりも、どんな人とのおつきあいが始まるのか、が気になります。そして、今居る場所の友人と離れることに悲しみを覚えることもあります。

お子さんが小学生くらいで仲のよい友達が近くにいれば、友達と離れたくない、と言い出すかもしれません。その場合、どんな場所よりも今いる場所が最高と子どもは考えます。

それでも、新しい場所では、もっとよい出会いがあるかもしれませんね。友人や教師との素敵な出会いがある場所に引っ越すことができたら、最終的に子どもは喜んでくれるでしょう。それこそが、最高の子育て環境……でも、そんな場所、狙ってみつけることはできません。

私はこの3月で65歳になりました。65年の経験で得た教訓に、「狙って得た成果より、狙わずに得た成果のほうがはるかに大きい」というものがあります。あれこれ考えて場所選びをするより、無意識に選んだ場所のほうが出会いにも恵まれ、結果的によかったということになりやすいわけです。

といっても、何も考えずに場所選びをすることはできません。そこで、「子どもにとって最良の環境」に執着せず、親が「ここに住みたい」と思った場所に居を構えるのはどうでしょう。いいところに住めたね、と父母が笑い合っていれば、子どもは幸せを感じます。子どもにとっては、両親が仲良く、笑顔でいることが「最高の環境」であることを忘れてはならないでしょう。

情報提供:住宅ジャーナリスト 櫻井幸雄

1984年から週刊住宅情報の記者となり、99年に「誠実な家を買え」を大村書店から出版。以後、多くの著書を送り出し、新聞雑誌への寄稿、コメント出しも精力的にこなす。2000年の文化放送「梶原放送局」を皮切りに、テレビ・ラジオに多く出演。