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櫻井幸雄の人生相談

2018.11.19

Question

第27回 マンションを購入しようか迷っていますが、資産価値って気にしたほうがいいの?

櫻井先生こんにちは。妻と娘と3人で暮らす30歳男性です。

最近、身の周りの友人でマンションを購入する人が増えてきていて、4歳になる娘の今後のことを考えたりすると、そろそろ自分もマンションを購入してもいいのかなと思い始めています。

せっかく買うなら後悔したくないと思い、先日マンションを購入した友人に相談してみました。その友人からは、マンションを買う際には価格やエリアはもちろんのこと、資産価値も大事だと言われました。

まだマンションを買うか迷っている段階で、売るときのことを考えて資産価値も考慮したほうがよいのでしょうか…?それとも資産価値は気にせず、自分の住みたいエリアや予算を重視するべきなのでしょうか?

櫻井先生、アドバイスをください!
(30歳 会社員男性)

マンションを購入するとき、資産価値を気にする人は多いですね。将来、高く売れるか、高く貸せるかを気にするわけです。これから家族での楽しい生活が始まろうとしているのに、売ることや貸すことを考える。そのことに違和感を感じる人は少なくありません。ご質問者も、そのような違和感を感じているようです。

じつは、私も変だと思っています。というのも、マンション購入で資産価値を気にするのは本来、投資家の発想です。不動産に投資して利益を得ようとする人であれば、「将来、高く売れるか、高く貸せるか」を気にするのは当然でしょう。

投資家が資産価値を重視し「資産価値が低い物件は買うべきではない」と声高に叫ぶので、自ら住む目的の住まい=マイホームを買う人にも「なによりも資産価値が大事」という考え方が広まってしまっているのではないか。私には、そう思えてなりません。

いやいやマイホームだって資産価値は大事、という人はいます。なぜかといえば、やむを得ぬ理由で家を売らなければならなくなったとき、大きく値下がりしていたら困る。値上がりしていたら助かるので、資産価値を重視してマイホームを買うべきだというわけです。これは、実に的を得た理論のように思えます。ところが、不動産の実状を考慮すると、必ずしも正しい理論ではありません。そのことを順序だてて説明しましょう。

まず、「資産価値が高い」とされるマンションは総じて値段が高くなってしまいました。高く売れる、高く貸せるマンションとは、都心部や郊外でも駅から徒歩3分以内のような便利な立地の物件。それらは、現在、都心部で3LDKが2億円以上に、郊外駅近マンションも3LDKが7,000万円台から、というような水準まで上がっています。

ここまで値段が上がると、購入できる人は限られ、これから先の値上がり率も鈍ると考えられます。さらに、都心や郊外駅近の場所は便利ではあるものの、住環境に難あり、ということになることも考えられます。

たとえば、日当たり良好とは言いにくい、身近に緑が少ない、夜中も騒音や治安の問題が、そして抑えた価格で品ぞろえ豊富な大型スーパーマーケットが遠いなどといったことも可能性としては考えられます。

加えて、都心や郊外駅近のマンションは住戸の面積が圧縮されがちです。分かりやすく言えば、同じ3LDKでも狭い間取りになるわけです。資産価値が高いとされる都心や郊外駅近のマンションは、便利ではあっても,必ずしも住み心地がよいわけではないのです。

一方で、資産価値が低いとみなされるマンション、たとえば郊外で駅から徒歩8分とか10分以上のマンションはどうでしょうか。首都圏でも、3LDKが3,000万円台、4,000万円台で購入できる物件が少なくありません。

そして、郊外で駅から離れたマンションは価値が低いわけでもありません。「将来、高く売れる、高く貸せる」という側面からみれば魅力は薄くなりますが、一方で住環境がよい場合が多いという価値があります。

静かだし、日当たりがよい、緑が多く、空気がきれい。夜は虫の声を聞きながら安眠できるし、治安も守りやすい。間取りもゆったり。近年は駅から離れた場所に大型商業施設が誕生することが多く、そのような商業施設に近ければ、むしろ生活は便利となります。

最後に、都心や郊外駅近マンションよりも安く購入できるので、ローン返済が楽。楽なローン返済で、子どもの教育や家族の思い出づくりにお金をかけることができる、という価値もうまれます。いずれも数字に表しにくい価値ですが、近代の経済学では、数字にできない価値も重視するようになっています。マイホームを買うときは、「将来高く売れる、高く貸せる」以外の価値のことも考えて物件選びをしていただきたい。私はそう願っています。

情報提供:住宅ジャーナリスト 櫻井幸雄

1984年から週刊住宅情報の記者となり、99年に「誠実な家を買え」を大村書店から出版。以後、多くの著書を送り出し、新聞雑誌への寄稿、コメント出しも精力的にこなす。2000年の文化放送「梶原放送局」を皮切りに、テレビ・ラジオに多く出演。