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地鎮祭とは?必要性や費用、流れ、マナー、準備するもの総まとめ
家を建てるときに行われる地鎮祭(じちんさい)とはどのようなものでしょうか?必ず行わなければいけないのでしょうか?もし、行う場合は何が必要で、費用はどのくらいかかりますか?教えてください。

地鎮祭(じちんさい)とは、建築工事や土木工事が始まる前に神主を招き、その土地の神様に対して工事の安全を祈願する儀式です。地鎮祭を行うかどうかは、施主が判断する立場にあります。費用を抑えて略式で行うこともでき、やり方によって必要な準備と費用が変わります。
情報提供:不動産鑑定士 竹内 英二
目次
地鎮祭とは?
きれいにならされた土地に4本の竹が立てられ、しめ縄飾りが張られているのを見かけたことはありませんか?その様子は「地鎮祭(じちんさい)」という儀式の風景です。地鎮祭とは、どういった儀式で、どのような意味があるのでしょうか?
今回の記事では、これから新築の家を購入する方に役に立つ、地鎮祭の意味や進め方、さらに費用の相場などを分かりやすくお伝えします。

建設工事前に行う儀式
地鎮祭とは、新しく建物を建設する前に行う、敷地の平安と工事の安全を祈る儀式です。新しくその土地に建物を建築すること、そしてそこに住むことを地主神に報告します。地鎮祭には、主に以下の3つの意味があるといわれています。
・その土地を守っている地主神を祭る意味
・工事の安全を祈る意味
・敷地の平安を祈る意味
地鎮祭は、古くは日本書紀にも記されている伝統的な風習で、現在も日本全国で受け継がれているものです。地鎮祭の方式は神式が一般的になっていますが、宗教によって仏教式やキリスト教式で行われることもあります。
絶対行わないといけないものではない
家を建てる前に行う地鎮祭ですが、行うことが義務として決まっているわけではありません。「古い習わしなので必要ない」「手間やお金がかかるので大げさにしたくない」と考える方もいるでしょう。

地鎮祭を行うかどうかは、施主が判断する立場にあります。地鎮祭には施工会社(施工業者)側が施主に対して「よろしくお願いします」とあいさつをする意味も込められているため、何もいわなければ施工会社が準備を進めてくれます。しかし、行いたくない場合にはその旨を施工会社に依頼すれば行わずに建築工事を始めることも可能ですよ。
地鎮祭を行わない場合は、工事関係者だけで地鎮祭の略式のような形で安全祈願を行うことがあります。安全祈願をしたいとの申し出があった場合は、聞き入れるようにしましょう。
建物を建てる際の儀式はほかにもある
地鎮祭以外にも、家を建てる際の儀式として「上棟式(じょうとうしき)」があります。別名として、「建前(たてまえ)」と呼ばれるものです。
上棟式は、木造建築で骨組みが屋根まで組み上がったことを祝う儀式です。木造建築では一般的に、基礎を作り、その上に柱や梁などを立て、最後に屋根の骨組みを組みます。屋根の最上部の棟木がついたことは、家の骨組みが完成したことを意味しており、これを祝う儀式なのです。
上棟式では、棟梁が仕切り、建築にかかわる人々に施主が料理やお酒を振る舞います。また、屋根の上からお餅やお金をまいたり、業者や大工さんなどの関係者にご祝儀を配ったりすることもあります。

一戸建て住宅での上棟式(建前)の風習は、現代ではほとんど残っていないようです。大きなオフィスビル等の一部の工事現場において、最上階の鉄骨を組み立てる際、タワークレーンで鉄骨を引き上げる作業をセレモニーとして上棟式を行うケースが多くあります。
また、安全祈願祭という儀式もあります。安全祈願祭はリフォームを行う際に、更地ではない状態で行う神事です。一般的に、新築の物件を建てる際に更地で行う地鎮祭とは違うものになります。
地鎮祭のやり方は?
地鎮祭(じちんさい)の必要性についてお伝えしました。では実際に地鎮祭を行う場合には、どのような手順を踏めばよいのでしょうか?
地鎮祭は、施工会社が主催する場合が多いため、施主は準備についてあまり心配はしなくてもよいかもしれません。施工会社が祭壇やテントの準備や段取りをしてくれるので、施工会社の指示に従えば、無事に地鎮祭を終えられるでしょう。
そのため、ここでは施主として知っておきたい地鎮祭の流れや準備についてご紹介していきますね。
地鎮祭当日の流れ
地鎮祭は、地域や予算、形式などによって内容が変わることもありますが、今回は一般的な神式の地鎮祭の流れをお伝えします。

地鎮祭は以下の12の行程で進められます。できれば、地鎮祭が始まる前に手水桶(ちょうずおけ)と柄杓(ひしゃく)を用意して、手を清められるようにしておくとよいでしょう。地鎮祭は以下の流れで行われます。
儀式 | 内容 |
---|---|
[ 1 ] 修跋(しゅばつ)の儀 | 全員が起立して、神主さんが、お供え物と参列者を祓い清めます。 |
[ 2 ] 降神(こうしん)の儀 | 神主さんが地主神を招きます。参列者は起立して、頭を下げ、祭壇に地主神をお迎えします。お迎えしたら、一度着席します。 |
[ 3 ] 献饌 (けんせん) | 神主さんが、奉献酒とお水、お供え物を地主神に差し上げます。 |
[ 4 ] 祝詞奏上(のりとそうじょう) | 神主さんが、地主神に新築の安全祈願を行います。参列者は起立して、頭を下げ祈願します。 |
[ 5 ] 四方祓い(しほうはらい) | お米とお塩、白紙によって土地を清めます。 |
[ 6 ]鍬入れの儀(くわいれのぎ) | 鍬入れの儀は地鎮祭のメインイベントであり、施主も参加します。鍬入れの儀では、施主は大きな声で「エイエイエイ」と3回かけ声をかけて砂を崩す動作を行います。通常は設計者が鎌、施主が鍬、施工会社が鋤で3回土を掘り起こします。 |
[ 7 ] 玉串拝礼(たまぐしはいれい) | 宮司、施主の順番に2礼2拍1礼で玉串を祭壇に置き地主神に捧げます。祭壇に置くときは、茎を祭壇に向けて両手で丁寧に置きましょう。 |
[ 8 ] 撤饌(てっせん) | 神主さんがお供え物を下げます。 |
[ 9 ] 昇神の儀(しょうじんのぎ) | 神主さんが、地主神を送り返します。一同起立して、地主神をお見送りします。 |
[ 10 ] 神酒拝戴(しんしゅはいたい) | 安全を祈願して献杯します。音頭は神主さんが行います。 |
[ 11 ] 神官退下(しんかんたいげ) | 神主さんが現場を後にします。 |
[ 12 ] 直会(なおらい) | 大きな工事現場では、地鎮祭の後にホテルやレストランで直会と呼ばれる食事会等をすることがあります。その際は、施主が参加者の前であいさつを求められる場合があります。しかし、一戸建てや小さなマンションなどの場合は、経費圧縮の観点から行わないのが通例です。 |
地鎮祭にかかる時間は、一般的に開会から閉会までで30〜40分程度です。また、参加する際の服装は、フォーマルな格好が基本になります。

なお、地鎮祭が終了したら、ご近所へあいさつ回りに行きましょう。建設が始まると、何かと大きな音がしてしまいます。そのため、地鎮祭のタイミングで、事前にご近所の方に家を建てることや引越してくることを報告し、騒音や振動が発生しそうな時期について説明をしておくことが大切です。その際に、タオルのような粗品があるとよいでしょう。
当日までには準備が必要
地鎮祭を行うためには4つの準備が必要です。具体的には、日取りの決定、神主さんへの依頼、必要なものの準備、参加者の確認があります。地鎮祭の段取りは、基本的には施工会社に任せて大丈夫ですが、念のため自分がやるべきことはあるか確認をしておくとよいでしょう。それぞれの準備について以下で説明します。
●日取りの決定
まず欠かせないのが、地鎮祭の日取りの決定です。工事のスケジュールの関係から、地鎮祭は1~2週間程度の期間のなかから最適な日取りを選んで決めます。そのなかで、一般的には、暦の「仏滅」や「赤口」を避け、「大安」「友引」「先勝」に行うのがよいとされています。加えて、時間帯にも決まりがあり、できれば牛の刻(11~13時頃)に行うのが望ましいです。

また、地鎮祭は雨の日でも行われる場合が多くあります。雨は土地を清めるとされ、縁起がよいといわれているため、雨の日に決行したからといって特段マイナスになるとは考えられていません。
●神主さんへの依頼
地鎮祭を神式で行う場合は、神主さんへの依頼が必要です。神主さんへの依頼は施工会社が行ってくれることがほとんどになります。自分で依頼する場合には、家を建てる土地の氏神神社に頼むのが一般的です。氏神神社が分からない場合は、各都道府県の神社庁に問い合わせてみるとよいでしょう。
神主さんは年間を通してさまざまな神事を行っています。いくらよい日取りを決めても、神主さんが来られなければ仕方ありません。そのため、地鎮祭の日取りは複数の候補を挙げるのがおすすめです。上記でもお伝えしたように神主さんへの依頼は、一般的に施工会社が行ってくれるため、施工会社と相談して決めるとよいでしょう。遅くても1か月前には、神主さんのスケジュールを確認して、参加をお願いしておきましょう。

●必要なものの準備
地鎮祭では、祭壇を用意してお供え物をする必要があります。必要なものは施工会社が準備してくれることが多いものの、初穂料(はつほりょう)や奉献酒(ほうけんしゅ)など、施主が用意しておかなければならないものもあります。何を用意すればよいか、ハウスメーカーや工務店に事前に確認しておきましょう。
お供え物は地域や予算によって違いがありますが、ここでは一般的な地鎮祭で必要とされているものについて説明します。
必要な場面 | 準備するとよいもの |
---|---|
地鎮祭の会場作り | 竹、締め飾り、幕など |
神事 | お米、奉献酒、お塩、榊(さかき)、大麻(おおぬさ)など |
お供え | 鯛、昆布などの海の幸や果物、野菜などの山の幸 |
神主さんへのお礼 | 初穂料 |
直会 | お神酒を飲む器や食事など |
ご近所への手土産 | タオル、菓子などの粗品 |
加えて、神主さんへお礼として渡す初穂料を包むためののし袋も用意しましょう。初穂料の金額の目安や、のし袋に記載する内容などは、後ほどお伝えします。また、前述の通り地鎮祭後に近隣へあいさつ回りを行う場合は、粗品があるとよいでしょう。粗品はタオル程度のもので大丈夫です。一般的には施工会社が用意してくれますが、用意してもらえないこともあります。その場合は、施工会社に工事の工程表や現場監督の連絡先が記載されたあいさつ文などを用意してもらい、それらを持って現場監督と一緒に近隣にあいさつするようにしてください。

●参列者の確認
日取りの決定や、神主さんへの依頼が完了したら、地鎮祭に参列する人を確認しておきます。主な参列者としては、施主、施工会社や設計会社それぞれの関係者が一般的です。
なお、施主の判断によって、ほかの来賓を招くこともできます。その際、別居している両親を地鎮祭に招くべきか判断に迷う方もいるようですが、ご両親が高齢であったり、住まいが遠方であったりする場合は、地鎮祭を行う旨を伝えるだけにとどめておくのも1つの方法です。家が完成してから改めて招き入れることで、両親への負担も軽減されるでしょう。
地鎮祭にかかる費用は?
地鎮祭(じちんさい)の手順や当日までの準備についてご紹介しましたが、具体的に地鎮祭を行うためにはどのくらいの費用が必要なのでしょうか?
地鎮祭で施主が支払う費用は、主に「初穂料(神主さんへの謝礼)」と「奉献酒代」の2つがあります。これらの金額は合わせて数万円程度になる場合が多いでしょう。

上記でも説明した通り、地鎮祭の準備は、施工会社が行ってくれる場合が多いため、施工会社からの見積もりに現場諸費用として組み込まれていることが一般的です。そのため、地鎮祭の準備のために追加で費用がかかる部分は少なく、施主が新たに負担する費用は「初穂料」と「奉献酒代」の2つと考えてよいでしょう。
神主さんへの謝礼として渡す「初穂料」の相場は、2万~5万円程度です。初穂料は、もともと稲作の実りに感謝して神様にお供えするものを指し、その名残から、今でも神様へのお礼のために支払うお金のことを意味しています。
初穂料は、「玉串料」「お供え」と同様の意味で、地鎮祭のほかでも結婚式の神前式や、お宮参り、七五三などの際にも使われます。
また、奉献酒と呼ばれる日本酒をお供えする必要があり、奉献酒にかかる費用の目安は5,000円程度です。一般的に清酒2升を用意します。
「のし袋」の書き方は?
地鎮祭(じちんさい)で必要な神主さんへの初穂料は、前述の通り「のし袋」に包んで渡します。その際に使用する「のし袋」の選び方や、書き方について分かりやすくお伝えしましょう。

のし袋を選ぶ
地鎮祭では、一般的に下の写真のような紅白のひもを使用した「蝶結びの水引」または「淡路結びの水引」を使用します。用意する際は、水引がこの2つの結び方になっているのし袋を選びましょう。


水引には、ほかにも固結びされた「結びきりの水引」という結び方がありますが、この水引は、繰り返しを避けたいお祝いの際に使用します。地鎮祭は繰り返しても問題ないお祝い事であるため、この水引は使用しないようにしましょう。
<結びきりの水引>
のし袋の表面の書き方
袋の表面には、「御初穂料」という言葉と「氏名」を記載します。水引の上側中央に「御初穂料」あるいは「玉串料」「御供え」などを書きましょう。
また、水引の下側中央には、施主の氏名を記載します。1人の場合はフルネームを、家族を連名で書きたい場合は、世帯主をフルネームで書き、世帯主の姓名の名の横に家族の名前のみを並べて書いてください。このとき、氏名の文字の大きさが、上部に書いた「御初穂料」よりも大きくならないようにしましょう。
<例>
のし袋の中袋の書き方
のし袋には、多くの場合中袋が付いています。中袋には、表面中央に「金額」、裏面左側に「住所と氏名」を記載しましょう。金額を書く際は、漢数字で記載するようにしてください。
また、中袋が付いていない場合は、のし袋の裏面左側に金額と住所、氏名をまとめて記載しましょう。
地鎮祭を行って安心・安全な暮らしを!
ここまで地鎮祭の意味から準備、当日の流れなどについてお伝えしてきました。地鎮祭は、「家を安全に建て、長く安心して暮らせるようにするための儀式」です。
神主さんへの依頼や必要なものの準備など、事前に行っておかなければならないことがあるため、あらかじめ確認しておきましょう。事前の準備と合わせて、当日の流れも把握しておくとスムーズに地鎮祭を行うことができます。
地鎮祭は、安全に家づくりを進めることを祈るためだけでなく、ご近所にあいさつするきっかけにもなります。これから長く住むことになる土地の神様に、正しくあいさつするために、家を建てる土地のルールもよく理解したうえで、地鎮祭を行えるとよいですね。
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情報提供:不動産鑑定士 竹内 英二
株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、不動産キャリアパーソン、中小企業診断士。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングを行う。
HP:https://grow-profit.net/